道徳と利益は両立するという主張
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コマ4
凡例本書題して『論語と算盤』とせしは、毫も奇を街ひ異を好みて世人に迎合せんが爲にあらず569~18して、其の命名は全く次項の理由に基くものなり本書收むる所は、我邦實業界の一大權威たると共に、特に財界の恩惠者たる澁澤子爵が、明治の初年大に慨する所あり、輒ち印綬を解きて野に下り、飜然として實業界に投ぜらるるに方り、信條を孔子〓に執り、爾來四十有餘年の久しき、『論語と算盤』とは必ず合致すべきもの、又合致せしめざる可からざるもの、換言すれば、『仁義と殖利』とは、其の根柢に於て必例ずしも捍格するものにあらざることを創唱し實踐し、身を以て範を垂れ、且つ筆に舌に鼓吹せられつゝあるの精髓なり。簡册を成すが如きは、素より子爵の志にあらざるは敢て再言するの要なしと雖も、世上今尙ほ『道義と金錢』とは柄鑿相容れざるものゝ如き謬想に囚はるゝもの尠少にあらざるを以て
コマ5
茲に偉人の活〓訓を提供して、之が迷夢を警醒せんが爲め、特に快諾を得て蒐集編纂せるものなり。書中に蒐輯せるものは、子爵が時處に關はらす、物に應じ事に接して訓話せられたるものなれば、れば、固より一の著述に於けるが如く、秩序的の系統をなさゞるは言を須ゐざるのみならず往々重複するもの尠からざれども、重複は卽ち丁寧反覆の意にして、特に其の事項に對して注意を促ずものと謂ふべきのみ。書中、篇を設け章を別ちたりと雖も、是れ固より每訓話の全壁に亘るものにあらずして、中に就て崑山の片玉を招遮し、讀書子の繙閥に便ぜんが爲め、特に編者が推類區分したるに過中ぎざるなり。本書を編纂するに方りては、之が資料は悉く龍門雜誌に仰ぎたるものなれば、爰に明記して責任を明かにす。本書の刊行に際しては、子爵門下の龍門社幹事八十島親德氏は、常に公私の要務多端なるにも關はらず、も關はらず、一再ならず貴重の時間を割愛し、以て懇篤なる幇助と便宜とを與へられたり、仍つて茲に特記し、謹んで感謝の意を表す。編者識
コマ7
大丈夫の試金石蟹穴主義が肝要得意時代と失意時代元豐立志と學問精神老衰の豫防法現在に働け大正維新の覺悟秀吉の長所と短所自ら箸を取れ大立志と小立志との調和君子の爭ひたれ社會と學問との關係勇猛心の養成法毛交〓一生涯に歩むべき道な常識と習慣常識とは如何なるものか口は禍福の門なり惡んで其の美を知れ習慣の感染性と傳播力偉き人と完き人親切らしき不親切何をか眞才眞智と謂ふ
コマ8
動機と結果人生は努力にあり正に就き邪に遠ざかるの道仁義と富貴眞正の利殖法効力の有無は其人に在り天孔夫子の貨殖富貴觀防貧の第一要義罪は金錢にあらず金力惡用の實例義理合一の信念を確立せよ富豪と德義上の義務能く集め能く散ぜよ理想と迷信道理ある希望を持てこの熱誠を要す道德は進化すべきか斯の如き矛盾を根絕すべし人生觀の兩面これは果して絕望か·一九八日新なるを要す修驗者の失敗
コマ9
眞正なる文明發展の一大要素廓〓の急務なる所以言目人格と修養樂翁公の幼時人格の標準は如何誤解され易き元氣二宮尊德と西〓隆盛修養は理論ではない平生の心掛が大切東照公の修養誤解されたる修養說を駁す權威ある人格養成法商業に國境なし算盤と權利仁に當つては師に讓らず夫金門公園の掛札唯王道あるのみ競爭の善意と惡意合理的經營實業と士道
コマ10
武士道は卽ち實業道なり文明人の貪戾相愛忠恕の道を以て交はるべし天然の抵抗を征服せよ模倣時代に別れよ此にも能率增進法あり果して誰の責任ぞ功利學の弊を芟除すべし此の如き誤解あり〓育と情誼孝は强ふべきものにあらず現代〓育の得失偉人と其の母其の罪果して孰れに在りや理論より實際孝らしからぬ孝人物過剩の一大原因云八成敗と運命それ唯忠恕のみ失敗らしき成功人事を盡して天命を待て湖畔の感慨
コマ11
順逆の二境は何れより來るか細心にして大膽なれ成敗は身に殘る糟粕次終算盤子爵澁澤榮一述處世と信條論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの今の道德に依つて最も重なるものとも言ふべきものは、孔子のことに就て門人是は誰でも大抵讀むと云ふ事は知つて居るが達の書いた論語といふ書物がある、此の論語といふものと、算盤といふものがある、是は甚だ不釣合で、大變に懸隔したものであるけれども、私は不斷に此の尊盤は論語に依つて出來て居る、論語論語
コマ12
は又算盤に依つて本営の富が活動されるものである、故に論語と算盤は、甚だ遠くして甚だ近いものであると始終論じて居るのである、或時私の友人が、私が七十になつた時に、一の畫帖を造つて吳れた、其の畫帖の中に論語の本と算盤と、一方には「シルクハツト」と朱鞘の大小の繪が描いてあつた、一日學者の三島毅先生が私の宅へござつて、其の繪を見られて甚だ面白い、私は論語讀みの方だ、お前は算盤を攻究して居る人で、其の算盤を持つ人が斯くの如き本を充分に論ずる以上は、自分も亦論語讀みだが算盤を大に講究せねばならぬから、お前と共に論語と算盤を成るべく密著するやうに努めやうと言はれて、論語と算盤のことに就て一の文章を書いて、道理と事實と利益と必ず一致するものであると云ふことを、種々なる例證を添へて一大文章を書いて吳れられた、私が常に此の物の進みは、是非共大なる慾望を以て利殖を圖ることに充分でないものは、決して進むも論語算は、のではない、只空理に趨り虚榮に赴く國民は、決して眞理の發達をなすものでは實業界が成るべない、故に自分等は成るべく政治界軍事界などが唯跋扈せずに、く力を張るやうに希望する、これは即ち物を增殖する務めである、是が完全で無其の富を成す根源は何かと云へば、ければ國の富は成さぬ、仁義道德、正しい道理の富でなければ、其の富は完全に永續することが出來ぬ、玆に於て論語と算盤といふ懸け離れたものを一致せしめる事が、今日の緊要の務と自分は考へて居るのである。商才魂士黄、菅原道眞は和魂漢才といふことを言つた、これは面白いことゝ思ふ、に對して私は常に士魂商才といふことを唱道するのである、和魂漢才とは、これ日本
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出典: 青空文庫(渋沢栄一『論語と算盤』)。本文は著作権の保護期間が満了した公開テキストです。
名著伴読は長い作品を一度に読み切れる長さへ区切っています。下の内訳はその区切りです。
| 節 | 見出し | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | コマ4 | 約20分 |
| 2 | コマ23 | 約19分 |
| 3 | コマ36 | 約19分 |
| 4 | コマ49 | 約19分 |
| 5 | コマ63 | 約19分 |
| 6 | コマ76 | 約19分 |
| 7 | コマ90 | 約19分 |
| 8 | コマ103 | 約19分 |
| 9 | コマ116 | 約20分 |
| 10 | コマ130 | 約19分 |
| 11 | コマ143 | 約19分 |
| 12 | コマ156 | 約20分 |
| 13 | コマ170 | 約20分 |
| 14 | コマ184 | 約19分 |
| 15 | コマ197 | 約20分 |
| 16 | コマ211 | 約6分 |
この問いに、渋沢栄一はこう書いています。下はすべて原文からの逐語引用です。
は又算盤に依つて本営の富が活動されるものである、故に論語と算盤は、甚だ遠くして甚だ近いものである
本書題して『論語と算盤』とせしは、毫も奇を街ひ異を好みて世人に迎合せんが爲にあらず
『論語と算盤』とは必ず合致すべきもの、又合致せしめざる可からざるもの、換言すれば、『仁義と殖利』とは、其の根柢に於て必例ずしも捍格するものにあらざることを創唱し實踐し
名著伴読では、こうした箇所を渋沢栄一の一人称でつなぎ、必ず原文の引用を添えて答えます。引用は原文と一字一句照合したものだけを出し、触れると原文のその箇所へ移動します。AI による再現であり、本人の発言ではありません。
名著伴読は青空文庫および各著者の関係団体とは無関係の非公式アプリです。